『Lost』04. 魔法使いサラバント
魔法使いサラバント
'三番目の記憶'
昔あるところに 恋人を亡くしたひとりの魔法使いがいた
彼が求めたのは 死者を甦らせる禁断の秘法
領分を侵す者に降りかかるのは 厄災のみと識りながら
何故人は求めるのか? 人知を超えた魔神の力を…
むかしあるところに こいびとをなくしたひとりのまほうつかいがいた
かれがもとめたのは ししゃをよみがえらせるきんだんのひほう
りょうぶんをおかすものにふりかかるのは やくさいのみとしりながら
なにゆえひとはもとめるのか? じんちをこえたまじんのちからを…
吹き荒ぶ風は砂を巻き上げて
若い旅人の行く手を阻む
旅の道連れは一頭の駱駝
砂丘[おか]を乗り越えて街へと向かう…
ふきすさぶかぜはすなをまきあげて
わかいたびびとのゆくてをはばむ
たびのみちつれはいっとうのらくだ
おかをのりこえてまちへとむかう…
「魔法のランプが欲しくはないか?」
胡散臭い髭の男が囁いた
うさんくさいひげのおとこがささやいた
薄暗い路地裏での駆け引き
うすぐらいろちうらでかけひき
彼は男が持ち出した条件を飲んだ…
かれはおとこがもちだしたじょうけんをのんだ…
ランプを擦ると魔神が現れ 3つの願いを叶えてくれると言う
願い事を1つ譲るという条件で 彼はそのを聞き出した
そのランプは 南西にある洞窟に封印されているという
片足が悪いという男の代わりに 彼は穴の中へと降りた…
らんぷをこするとまじんがあらわれ みっつのねがいをかなえてくれるとゆう
ねがいことをひとつゆずるというじょうけんで かれはそのききだした
そのらんぷは なんせいにあるどうくつにふういんされているという
かたあしがあるいというおとこのかわりに かれはあなのなかへとふりた…
砂漠の下には 大きな空洞
冷たい空気が 背筋を掠める
つめたいくうきが せすじをかすめる
洞窟の奥には 妖しい祭壇
どうくつのおくには あやしいさいだん
黄金のランプと 古びた絨毯
おうごんのらっぷと ふるびたじゅうたん
ランプを手に取ると 洞窟が崩れた
らんぷをてにとると どうくつがくずれた
「ランプを早くこっちへよこせ!」男が叫んだ…
「忘れモノは在りマセンカ…」
暗い闇の中 懐かしい声を聴く
暖かな光 愛しい声を聴く
「貴方はまだこっちへ来てはいけないわ
遣り残したことがきっとあるはず」
「あなたはまだこっちへきてはいけないわ
やりのこしたことがきっとあるはず」
暗い闇の中 懐かしい声が言う
暖かな光 愛しい声が言う
「失われたモノの為に願うより
今目の前にあるモノを見つめて」
目醒めれば砂が巻き上がる 砂丘の上で抱かれていた
めさめればすながまきあがる おかのうえでだかれていた
黒髪の美しい少女 泣きながら微笑んでいた
「古の罪と罰の輪舞曲[ロンド] ランプに閉じ込められていた
愚かな私を出してくれた御主人様[マスター]
さぁ願いをどうぞ 叶えましょう」
「いにしえのつみとばつのろんど らんぷにとじこめられていた
おろかなわたしをだしてくれたますた
さぁねがいをどうぞ かなえましょう」
3つの願い全て叶えたら少女は再び
唯冷たい砂の下で幾千の孤独に震える…
みっつのねがいすべてかなえたらしょうじょはふたたび
ただつめたいすなのしたでいくせんのこどくにふるえる…
そして彼は願った…
吹き荒ぶ風は砂を巻き上げて
若い旅人の行く手を阻む
旅の道連れは二頭の駱駝
長い黒髪の少女が一人…